JOY(ジョイ・イングリッシュ・アカデミー)

お問い合わせ・お申し込み

Last Journey(76) マラガはJOYの原点

 ファーストジャーニーでは、スペインをかなり長く旅しました。理由は単純、物価が安かったからです。当時、まともな食事にありつけたのは、スペインとイタリアくらいでした。スペインでは、バルセロナ、サラゴサ、マドリッド、トレド、セビリア、コルドバ、グラナダ、そしてマラガを訪れました。

 ラストジャーニーは基本「1カ国1都市」。では、なぜスペインはマラガ? 確かにガウディのサグラダ・ファミリアも見たかったのですが、ファーストジャーニーの私は、その存在すら知らずスルー。今思えば情けない話です。

 マラガは、かつて日本人4人でアンダルシアをレンタカーで旅した際、レンタカー屋さんとトラブルになった思い出の地。そのとき警察官が仲介し、私は大学で習った第2外国語・スペイン語を総動員して交渉。結果、一人2万円だった請求を5千円にまで減額成功!この経験が「一人になればやれる」と気づくきっかけになりました。もしこの出来事がなければ、24歳でパナソニックを辞め、帯広でJOYを始めることはなかったかもしれません。そう、マラガはJOYの原点だったのです。

 14日にマラガ入り。しかし空港で中央駅までのチケットがなかなか買えず、やっと食べたランチの中華はハズレ。さらにアイスは買った時点ですでに半解け。「やっぱりマラガは私を歓迎してない?」と心が曇りかけました。

 もちろん、中央駅のレンタカー屋さんにも行ってみました。今や新しい駅は昔の面影はなく、きちんとしたレンタカー屋さんが並んでいました。私がかつて戦ったレンタカー屋さん「テルミナル」は、当然ながら影も形もなし。あんな商売をしていたら会社が長持ちするはずがありません。それにしても、あの時の警察官、もしかしてレンタカー屋とグルだったのかもと、ふと思ったり。そして残念ながら、駅にはもう警察署はありませんでした。

 そんな中で気分が好転したのは、夕食で食べたイカ墨パエリア。これが見事に私の機嫌を回復させてくれました。おいしかった!

 そして今日(15日)は、スペイン大使館の内田さんおすすめの白い村「ミハス」へ。列車とバスを乗り継ぎ到着。バス乗り場で親切に道案内してくれたスペイン人にも感謝です。小さな親切は、旅の中で一番心に残ります。

 ミハスは想像以上に大きく、白一色の統一感に圧倒されました。お店のレベルも高く、思わず陶器屋さんで「JOY」と数字の「50」のタイルを購入。もちろん来年のJOY50周年のためです。店主は日本に3回行ったことがあり、毎月大量のタイルを日本に輸出しているとのこと。こんな偶然も旅の醍醐味ですね。

 そして極めつけは、今日からマラガ最大のフェスティバルが開幕! 街はすでにお祭りムード一色。夜12時からは花火大会。え? 12時は遅い? いえいえ、この季節のスペインはその時間にならないと真っ暗にならないのです。そんなビッグイベントのことも知らずにマラガを選んだ私ですが、もしかしてこれは「マラガに愛されてる」という証拠かも? しかもホテルは6カ月前に予約済みで、リーズナブルな料金。これはもう、マラガが私に「Bienvenido(ようこそ)」と言っているに違いありません。

Last Journey(75)ローマの悲劇が再び?

 ローマでの2日間はとても楽しかったけれど、「ローマを離れるまでは注意、注意」と自分に言い聞かせていました。そんな心構えをしていたら、なんと出発前から不穏な兆しが。 

 私のスマホの調子が急におかしくなり、これまで使っていたeSIMが機能しなくなったのです。ヨーロッパの駅はほとんど改札がないのですが、マラガ空港へ向かう列車は入口でチケットをかざさないと入れません。私の場合はユーレイルパスをかざす必要があります。

 そこで念のため、ユーレイルパスの表示画面をスクリーンショットして準備していました。しかし、改札は全く反応せず。やはり「本物」の画面を見せないとダメらしい。ところが、その画面を出すにはWi-Fiが必要…。何度やってもつながらない中、奇跡的に画面が表示されました。まさに九死に一生。

 しかも私が乗るライアンエアーの搭乗口は「A65」。この65番がとにかく遠い! 歩けど歩けどたどり着かない。やっとの思いで到着し、ベンチでほっと一息。朝食のパンをかじりながら「これで安心」と思った瞬間、ふと周りを見ると人が誰もいない…。掲示板を確認すると、なんと搭乗口がA75に変更されているではありませんか!

 A65まででも相当歩いたのに、A75はさらに遠い…と思いきや、73番まで行ったところで表示が消えている…。え? どういうこと? 実はA74とA75は階下にあったのです。まるで空港全体が私を試しているかのようでした。

 初めてのLCCフライトは、座席の狭さにびっくり。そんな空間に3時間、文字通りぎゅっと詰め込まれて、ようやくマラガに到着しました。やっと着いた…。今夜はきっと、A75が夢に出てくることでしょう。

Last Journey(74)ローマの休日2日目

   昨夜は珍しくカメラを持って、ホテル近くをぶらぶら撮影。何気なく立ち寄ったレザーショップの店主と話し込むことに。彼はこの店の三代目で、創業から50年以上。ハンドバッグはオリジナルで、小物は仕入れだそうです。50年といえば、JOYと同じ歴史。ふと自分の財布を見れば、ボロボロ… その場で「ローマの記念だ」と新しい財布を買ってしまいました。

 ローマ滞在2日目は、まずカラカラ浴場へ。実はファーストジャーニーのとき、ここで見学したあと、自称ブラジル人に騙されて10万円取られたという因縁の場所。だから「あのとき撮った写真の場所を探そう」と思ったのです。ところが、スタッフに見せたら「あー、ここじゃないね」と一言。あらら… 50年の記憶も、石造りの遺跡みたいに永遠ではなかったようです。まぁ、せっかくなので記念撮影。

 次に訪れたのは、『ローマの休日』でお馴染みのサンタ・マリア・イン・コスメディン教会。お盆の時期とあって、日本人観光客がいっぱい。みんなのお目当ては、もちろんオードリー・ヘップバーンになりきった、あの名シーンのポーズでした。

 それにしても、ローマはこの日も猛暑。ランチには、たまらず冷房の効いたレストランを探し、イタリア最後の日ということでやはりラザニアを注文。前回も美味しかったけれど、今回も大正解! 私はすっかりラザニアファンになりました。

 そして、ふと思いつきが。あの夜、騙されてローマ駅近くに放り出された私は、真っ先に駅の警察署へ駆け込みました。そこで助けてくれた警察官にお礼を言いたくなったのです。駅で若い女性警察官に話すと、「じゃあ私がそのお礼を受け取るわ」と笑顔。でも「いや、やっぱり警察署そのものへ行きたい」と伝え、教えてもらった場所へ。

 辿り着いたのは駅の端の端。「ここまで来るの、問題を抱えた人には結構ハードル高いよなぁ」と思いながら記念写真をパチリ。50年前のあの警察官の仕草が、今も忘れられません。「なんで日本人はこんなに騙されるのかなぁ?」という表情と、「どうにもできないよ」という、あの諦めの顔。

 こうしてローマの休日2日目の夜は更けていきました。もうローマにも、イタリアにも、イタリア人にも、何の蟠りもありません。今はただ、「また来てよかった!」と思える、大好きな街になりました。

Last Journey(73)ローマの休日

 私のファーストジャニーで最悪の出来事は、ローマで起きました。日記によると、それは1974年9月6日、ローマ最終日のこと。長くなるので簡単に言うと──自称ブラジル人に騙され、暴力バーに連れて行かれ、ビール1杯で当時の金で10万円も取られたのです。

 10万円といえば大金。なにせ、3ヶ月の旅のために持参したのは45万円。ローマでの宿泊代は1泊750円、ランチはローマ大学の学食。そんな倹約旅行で10万円のビール代は、まさに「世界一高い苦い一杯」でした。そのせいで私は長い間、ローマ、イタリア、そしてイタリア人にあまりいい印象を持てませんでした。

 今回の旅では、基本的に1ヶ国1都市を選んでいます。イタリアはあえてローマ。あの苦い記憶を甘い思い出に塗り替えたかったからです。

 そして今日、ローマに着くやいなやランチはエビのリゾット。日本を出て27日目にして、初めてのお米。これがまた美味しい! ファーストジャニーでも行ったトレビの泉とスペイン広場にも足を運びました。特にトレビの泉はものすごい人、人、人。まさにオーバーツーリズムの見本市。でも、人が集まる場所は不思議と楽しい。写真を撮る人はみな笑顔。やっぱり観光は人を笑顔にしてこそ、ですね。

 こうしてローマ1日目はしっかり楽しめました。やはりローマは“世界のローマ”。カメラを向けたくなる景色があふれています。明日もこの勢いで、50年前のローマにリベンジです。それにしても──北国育ちの私にはローマは暑すぎ。だからこそ、スペイン階段のそばで食べたアイスは、格別おいしかったです。

 

Last Journey(72)ジェノバの夜

 イタリアのジェノバに来ています。ファーストジャーニー(50年前の旅)では立ち寄らなかった町です。今回、ミラノ〜ローマ間が線路補修工事で通れないため、別ルートを検討していたところ、ふとジェノバが浮上しました。正直、私のジェノバ知識は「イタリアの港町」というくらい。

 それでも、なぜか懐かしい響きのある名前でした。高校生の頃に聴いた、あるグループサウンズのバンドを思い出したのです。1960年代後半、日本は空前のGSブーム。全国で数えきれないほどのバンドが生まれました。その中に異色の存在がありました。名前は「ザ・ジェノバ(The Genova)」。

 イタリアの港町の名を冠しながら、歌の世界はなぜかロシア情緒。代表曲は1968年の『サハリンの灯は消えず』。コーラスを重視したアレンジに、歌謡曲のようなメロディー。歌詞からは北国や異国の香りが漂います。その後も『さよならサハリン』など、寒い海の向こうを感じさせる曲を発表しました。

https://www.youtube.com/watch?v=b7VKvTPNG2Q&list=RDb7VKvTPNG2Q&start_radio=1

 昨日、久しぶりにYouTubeで『サハリンの灯は消えず』を聴きました。懐かしい。あの頃、夢中でGSのレコードを聴きあさっていた自分がよみがえりました。今の若い人が聴いたら、逆に新鮮に感じるかもしれません。

 そして今回のジェノバ滞在、実はとても面白い出来事がありました。それはホテルです。いつものように宿泊サイトで予約したホテルへ行くと、なぜかチェックインにやたら時間がかかります。やっと自分の番になったと思ったら…「同じ条件で部屋をご用意していますので、隣のホテルへどうぞ」とのこと。多分、オーバーブッキングです。

 正直、「この重い荷物をまた転がすの?」と、ついてない気分で指定のホテルへ。ところが外壁は工事中で全貌は不明。中に入ってびっくり——超豪華! 部屋も広く、今回の旅で間違いなくナンバーワンの宿。

 ネットで調べると、創業は1897年。イタリアでも最古級のホテルだとか。しかもジェノバには、ここよりさらに古い5つ星ホテルまであるそうです。駅近、スパや屋上テラス付き、歴史と贅沢のハイブリッド。普通なら手が届かない場所に、まさかのアップグレード。写真はあえて載せませんが、初めての“5つ星体験”でした。

 こうして、思いがけない贅沢と共に、ジェノバの夜は静かに更けていきました。ところで、ジェノバは写真の被写体がいっぱい。いつかゆっくり歩きながら写真を撮ってみたい。でも暑い。来るなら冬がいいなあ。

Last Journey (71)列車での出会い -6-

 

 ミラノからジェノバへの列車は、まるでイワシの缶詰状態。現在、ミラノとローマ間では線路の補修工事が行われている影響もあるのでしょう。そのあおりを受けて、私も予定を変更し、ジェノバ経由でローマ入りすることになりました。

 旅行カバンを置く場所を探して右往左往していると、片言の日本語で「ここに置きなさい」と声をかけてくれた女性が。ミラノ在住の日系ペルー人、Sumikoさんでした。とても明るくて元気いっぱいの方で、一瞬にして車内は「片言の日本語+片言のスペイン語」の国際交流サロンに早変わり。

 実は私、大学時代の第二外国語はスペイン語。さらにファーストジャーニーでは、スペインに1週間半ほど滞在したことがあります。自慢できるほどではありませんが、不思議なもので、会話しているうちにポロポロとスペイン語の単語が口から出てくるのです。ここはイタリアなのに。

 イタリアのあとは、スペインのマラガで2泊予定。この2日間で、私のスペイン語力がどこまで“奇跡の復活”を遂げるのか、ちょっと真剣に挑戦してみようと思っています。50年ぶりのスペイン語との再会…果たしてどうなることやら。

 さて、陽気なSumikoさん一行とはジェノバ駅でお別れ。最後まで笑い声の絶えない人たちでした。ところで——列車の中で彼らと一緒に座っていた若い女性、実は彼らとはまったく無関係でした。なぜか彼女も、しっかり記念写真の中に写っています。旅って、こういうおまけがついてくるから面白いんですよね。

Last Journey(70)ミシュラン星付き朝食

 今回泊まったドモドッソラのホテルには、レストラン併設されていました。しかも、ただのレストランではありません。なんとミシュランの星を獲得している本格イタリアンです。その事実を知ったのは、チェックインの時でした。

 フロントで「それならランチを」と軽い気持ちで聞いてみると、「あいにく本日は予約で満席です」との答え。さらに「夕食は?」と聞くと、「日曜日はお休みでして…」と。あぁ、タイミング悪し。その時、ちょうど中国人の男性客がやってきて、同じ質問をしていました。彼はわざわざこのレストランで食べたくて調べてきたそうですが、「予約のみ」という現実に肩を落としていました。

 こうなったら、残されたチャンスは一つ。――朝食です。翌朝、ミシュラン星付きの朝食をいざ堪能。出てくる品はどれも、卵料理、パン、チーズ、ハムと、どこでも見かけるラインナップ。でも、一口食べてすぐにわかりました。「あ、これ全部レベルが違う…」。きちんと選び抜かれた素材は、ただのスクランブルエッグも、ちょっとした芸術作品のよう。

 中でも心をつかまれたのはサラミ。私は筋金入りのサラミ好きですが、この大きくカットされたサラミは香りも旨みも段違い。思わずおかわりしたくなりました。でも、そこで葛藤。「ここで皿いっぱいサラミを取ったら、“あの日本人、がっついてるな”って思われるかも…」。

 結局、ぐっと我慢しました。だって、日本のバイキングで“カニ山盛り”にしている人を見ると、ちょっと複雑な気持ちになりますよね。サラミは、心の中でだけおかわりしておきました。

Last Journey(69)小さな町はいい!

  スイスのティッシュから、イタリアのドモドッソラにやって来ました。この町の名前、知っている人はどれくらいいるでしょうか? たぶん、ほとんどの人は知らないと思います。もちろん、私も例外ではありません。ここはスイスからイタリアに入って最初の町。今日も駅でパスポートチェックがあり、無事に通過。

 実は今週、ミラノ〜ローマ間の路線が工事で運休中。そのため当初の予定を変更し、ミラノからジェノバ経由でローマへ行くことにしました。そうなると、どうしても旅程を1日削らなければならず、泣く泣くツェルマットを2日から1日に短縮。しかも、その1日でマッターホルンが見えなければ、翌日の午前・午後まで粘る覚悟でした。(ラッキーにも、1日目で晴天のマッターホルンを見ることができました!)そんなことを考えると、ミラノに着くのが夜になってしまう。それを避けるため、途中のドモドッソラで泊まることに。

 スイスでは隅々まで自然がきちんとケアされていましたが、国境を越えてイタリアに入ると…駅のプラットホームに雑草がいっぱい。思わず「これもイタリアの自然美か?」と自分に言い聞かせました。駅から眺めた人口約1万8千人の街の第一印象は「いいなあ」。そして半日過ごしたあとの感想も、「やっぱり、いいなあ」。

 何がいいって、ホテルは駅の目の前。今回の旅では駅チカ重視ですが、ここは徒歩3分。しかも1泊2万5千円と、この旅でほぼ最安クラス。やはり小さな町は物価も控えめです。ランチにはラザニア、夕食にはパスタ。どちらも約2,800円。イタリアはヨーロッパの中でも比較的安い国だとはいえ、小さな町はさらに財布に優しい。

 そして何より、人が親切。日本で座席予約はしていたのですが、車両と座席番号が届いていなかったので、駅のチケット売り場で相談。わずか5分でプリントしてくれました。ちなみにパリで同じことをしたときは…待たされて、終わったのは30分後。うん、小さな町はやっぱりいい。

 今回ドモドッソラを歩いていて思いました。私は、乗り物で回る街よりも、歩きながら写真が撮れる街が好きです。

Last Journey(68)ホテルは高い!

 

 今の日本人にとって、ヨーロッパはとにかく物価が高い。特に宿泊費は泣きたくなるレベルです。私は半年前からホテルを予約していたのですが、それでも高い。もちろん、高いか安いかは、その人の収入や価値観で変わるとは思います。

 今回、スイスだけはホテルではなく、ゲストハウスを選びました。キッチンやバスルームは共用で、寝室は個室というスタイル。ベルンでは、このタイプの部屋で約3万円。メリットは、ほかの旅行客と知り合いになれること。この日出会ったオランダ人の家族はとても感じの良い方々でした。ただ、私のように気を遣いすぎるタイプには、長期滞在はちょっとハードかもしれません。

 ツェルマットでは当初ホテルを予約していました。これが2泊で13万円。ところが旅程が変わって1泊に。2泊を1泊に変更するには、一度キャンセルして再予約が必要。そうなると当然、6カ月前の価格より高くなるわけで…。結局2泊分をキャンセルしました。

 代わりに見つけたのは、隣町テッシュのアパートタイプ。リビング、キッチンとダイニング、寝室、バス・トイレ、そしてバルコニー付き。これで約4万円。久しぶりにラーメンを作って食べ、広めのダイニングテーブルでブログ執筆。ここは完全に「暮らすように泊まる」感覚でした。

 こういうスタイルは、若者や家族旅行ではもう定番になっているのかもしれません。私のファーストジャーニー(50年前)は、ユースホステルとホームステイがメインでしたが、時代は変わりましたね。

Last Journey(67)赤いベンチは?

 スイスのツェルマットにやって来ました。今回のミッションは、51年前に撮った写真とできるだけ同じ構図で撮影すること。ブルージュ、オスロ、アルテナでも同じ挑戦をしてきましたが、今回は特別です。なぜなら、私の「ファーストジャーニー」の中でも、特に思い出に残る一枚だからです。

 当時、ツェルマットのユースホステルに泊まっていた私は、アメリカから来ていた若い女性に「マッターホルンに一緒に行きませんか?」と勇気を出して誘いました。もちろん一人では心細かったので、大阪から来ていた大学生と共同作戦。清水の舞台から飛び降りる覚悟で挑んだ結果…見事成功! 以来、マッターホルンは私にとって特別な山になりました。

 ただし問題は、その時どこの駅周辺で撮ったのか全く覚えていないこと。そこで、事前にAIのチャックに調査依頼。「赤いベンチが写っているなら、ゴルナーグラート鉄道のリッフェルベルク駅が怪しいですよ」とのアドバイス。

 ツェルマット駅を出発すると、早速マッターホルンが視界に。隣の席の日本人旅行者に声をかけると、神戸と名古屋から来たとのこと。なんと2つ目の駅で降り、レストランを予約してあるそうです。おしゃれすぎる…!

 そして3つ目、リッフェルベルク駅に到着。チャックの言う通りに赤いベンチを探すも…視界には赤いベンチはゼロ。そもそもベンチ自体がない。レストランの若いスタッフに聞くと「近くにはないけど、歩いて20分のところに1つあります」とのこと。ただし、「赤くないけどね」とも。

 とりあえず行ってみると、確かにベンチ発見! 作りは当時の赤いベンチそっくり、ただし色は茶色。まあいいか、自分に優しい自分がそう言いました。

 しかも、その場には偶然、日本人のご夫妻と娘さん2人が。思わずお母さんにお願いして、私の隣に座ってもらい、さらに娘さんの一人からはサングラスまで貸してもらって撮影。ノリのいい、優しい家族に出会えて、本当にラッキーでした。

 そして、登山鉄道で下山している時に判明。…この場所、全然違いました。なぜなら、同じ場所なら背景にマッターホルンを入れるのが常識。でも、50年前の写真にはマッターホルンが全く写っていないのです。まあ、いいか。今日は特に、自分に優しい自分がそこにいました。

Last Journey(66)列車での出会い -5-

 チューリヒまでの7時間、各駅停車の旅が始まりました。一等車は普段それほど混まないので、今日も大丈夫だろうと席に座り、ブログを書き始めます。ところが、一つ目の駅で予想外の展開。大勢の人が乗り込んできて、私の前に立った女性を見てピンときました――これは、予約席の持ち主だ!

 「すいません」と席を立ち、別の空いている席へ移動。すると、そこへ別の女性がやってきて「ここもダメ」との一言。彼女は自分の後ろの空席を指差し、「あそこなら大丈夫」と教えてくれました。

 なるほど、予約席には予約者の名前が表示されるんですね。私が座った席には番号だけで名前がありません。

 しばらくしてトイレから戻ると、その女性と目が合いました。「先ほどはありがとうございました」と再びお礼を言うと、彼女は微笑みました。実はその後、一等車はほぼ満席に。もしあのとき彼女の助言がなければ、席を確保できなかったかもしれません。

 その方の名前はサビーネさん。フランスの大学で政治学を教えている教授です。日本に興味があるのは一目瞭然。息子さんのTシャツには、なんと「築地市場」の文字!さらに面白い話も。オーストリア人のお父さんは、かつてオーストラリアに3年間滞在し、その帰りに日本で3カ月間旅をしたことがあるそうです。1960年代と聞いてびっくり!

 列車の旅は長かったけれど、また素晴らしい出会いがありました。私たちはメールアドレスを交換し、再会を誓いました。その後届いた最初のメールにはこう書かれていました。「チューリヒ駅での乗り換えになんとか間に合った!」たった5分しかなかったのに、家族4人でオリンピック記録を塗り替えたに違いありません。

Last Journey(65)8時間の列車の旅

 今朝は、ザルツブルクからベルンまで6時間の列車旅の予定でした。しかも前のブログには、「6時間なんてたいしたことない」と、ドヤ顔で書いたばかり。それが、それが、・・・。参りました。

 駅に着き、7時56分発のチューリヒ行きを探すと、発車案内に見当たらない。嫌な予感が胸をよぎります。よく見ると、8時8分にチューリヒ行きが。しかも列車番号は予定と同じ。駅員さんに確認すると、今日は線路工事で時間変更とのこと。

 「ああ、それなら…」とひと安心して乗車。ところが、車内モニターを見て愕然。まさかの各駅停車で、チューリヒ到着は午後3時20分。つまり2時間の追加サービス。ありがたくない。こうなっては腹をくくるしかない。のんびりチューリヒへ向かい、そこでベルン行きに乗り換えです。

 でも、すべてが悪いわけじゃない。車窓から広がる景色は息をのむ美しさ。十勝の雄大さも大好きですが、それとはまた別格。これが世界に誇るオーストリアとスイスの風景なんだな、と素直に感動。

アーカイブ
記事検索

お問い合わせやご相談は

お電話またはメールフォームよりご連絡ください。

0155-33-0198

(平日10:30~12:00、14:00~21:00)

お問い合わせフォーム

各コースのお申し込みは

入会ご希望の方は、本校まで直接お申込みください。

「子供向けコース」の
お申し込み

「社会人向けコース」の
お申し込み

一緒に学ぼう

Follow meJOYの公式SNSチャンネル