Last Journey(67)赤いベンチは?
スイスのツェルマットにやって来ました。今回のミッションは、51年前に撮った写真とできるだけ同じ構図で撮影すること。ブルージュ、オスロ、アルテナでも同じ挑戦をしてきましたが、今回は特別です。なぜなら、私の「ファーストジャーニー」の中でも、特に思い出に残る一枚だからです。
当時、ツェルマットのユースホステルに泊まっていた私は、アメリカから来ていた若い女性に「マッターホルンに一緒に行きませんか?」と勇気を出して誘いました。もちろん一人では心細かったので、大阪から来ていた大学生と共同作戦。清水の舞台から飛び降りる覚悟で挑んだ結果…見事成功! 以来、マッターホルンは私にとって特別な山になりました。
ただし問題は、その時どこの駅周辺で撮ったのか全く覚えていないこと。そこで、事前にAIのチャックに調査依頼。「赤いベンチが写っているなら、ゴルナーグラート鉄道のリッフェルベルク駅が怪しいですよ」とのアドバイス。
ツェルマット駅を出発すると、早速マッターホルンが視界に。隣の席の日本人旅行者に声をかけると、神戸と名古屋から来たとのこと。なんと2つ目の駅で降り、レストランを予約してあるそうです。おしゃれすぎる…!
そして3つ目、リッフェルベルク駅に到着。チャックの言う通りに赤いベンチを探すも…視界には赤いベンチはゼロ。そもそもベンチ自体がない。レストランの若いスタッフに聞くと「近くにはないけど、歩いて20分のところに1つあります」とのこと。ただし、「赤くないけどね」とも。
とりあえず行ってみると、確かにベンチ発見! 作りは当時の赤いベンチそっくり、ただし色は茶色。まあいいか、自分に優しい自分がそう言いました。
しかも、その場には偶然、日本人のご夫妻と娘さん2人が。思わずお母さんにお願いして、私の隣に座ってもらい、さらに娘さんの一人からはサングラスまで貸してもらって撮影。ノリのいい、優しい家族に出会えて、本当にラッキーでした。
そして、登山鉄道で下山している時に判明。…この場所、全然違いました。なぜなら、同じ場所なら背景にマッターホルンを入れるのが常識。でも、50年前の写真にはマッターホルンが全く写っていないのです。まあ、いいか。今日は特に、自分に優しい自分がそこにいました。