Last Journey(80)ジョン・ライル氏と
英文雑誌『ノーザンライツ』は、北海道大学名誉教授のウイリー・ジョーンズ先生の力なくしては刊行できませんでした。17年間続けることができたのも、ウイリー先生が校閲者として加わってくれたおかげです。
そのウイリー先生が他界されたのは昨年のことでした。そのことをきっかけに知り合ったのが、ジョン・ライルさんです。彼はウイリー先生のかつての教え子で、長年イギリスの新聞「ガーディアン」でコラムを担当し、現在は出版社を経営するとともに、アメリカの大学で教鞭をとっています。ウイリー先生の著書『Out of Our Hands』を出版したのも彼でした。
今回私がロンドンに行くことを知り、ジョンさんから「遊びに来ないか」と声をかけてもらいました。ロンドンの名所はファーストジャーニーでほとんど見ていたこともあり、今回はジョンさんに会うことを目的に、彼が待つWestbourne Park駅まで地下鉄で向かいました。
アパートへ向かう道すがら、遠回りしながら英語で会話している自分に気づきました。50年前には考えられなかった姿です。到着したアパートは古いレンガ造りの3階建てで、地下室もある建物。部屋には壁にかけられたセンスのいい絵や調度品、そして圧倒されるほどの本が並んでいました。そこにはウイリー先生の著作や『ノーザンライツ』まで揃っていました。
午後3時に会い、別れたのは6時。実に長く語り合いました。話題は多岐にわたり、別れる頃には頭も足もすっかり疲れていましたが、それ以上に充実感で満たされました。地下鉄まで送ってくれたジョンさんとは「次は日本で会いましょう」と約束して別れました。
ここで小さな番外編を。地下鉄の改札に入ろうとした時、美しい女性から突然声をかけられました。「私のお母さん、日本語を話せるんです!」。思わず「どういうこと?」と戸惑いましたが、聞けばお母さんはチェコ人で、日本語の通訳をしているとのこと。そこから話が広がり、最後には「次は日本で会いましょう」と言いながら記念写真を一枚。ちなみに、ご主人はチェコで活躍する音楽家だそうです。