Last Journey(49)チャップマンと感激の対面
岸辺から白い帆船が見えた瞬間、私は心の中で叫びました――「これだ!」。1974年8月9日、夜行列車でオスロからストックホルムに到着した私は、当時超人気だった唯一無二の帆船ユースホステル「チャップマン」に泊まろうと直行。が、満室。
日記によれば、その場で2日後の日曜日に予約を入れ、近郊のウプサラへ移動し2泊しています。どうしても泊まりたかったのでしょう。当時の宿泊料は14クローネ。日本円で980円。今思えば安いけど、日記には「高いけど、泊まる価値あり」と書いてありました。
ちなみに、スーパーで買った魚の缶詰が腐ったようなにおいで食べられず、泣く泣く捨てた、という記憶が蘇りました。
今回は残念ながらチャップマンの中には入れませんでした。今はストックホルム市の所有で、宿泊施設として運営されているそうです。でも、近くに同じ名前のホテルがあったので、そこのスタッフに声をかけてみました。
「50年前に泊まったんです。また会えて感激です!」と伝えると、にっこりと笑って優しく迎えてくれました。「中に入れませんか?」とお願いしてみたものの、「それはちょっと難しいですね」と申し訳なさそうに言われてしまいました。
それでも、チャップマンの前で撮った記念写真は、まるで50年前のタイムカプセルを開いたような一枚に。50年の旅を経て、私はまたあの港に戻ってきました。船はずっとそこにいてくれました。きっと、私を待っていてくれたのでしょう。
2025.07.31 03:04